花粉症・アレルギー性鼻炎とは

花粉症・アレルギー性鼻炎とは、特定の花粉などのアレルゲンに対して免疫系が過敏に反応し、鼻水、くしゃみ、鼻づまり、目のかゆみなどの症状を引き起こす慢性的な炎症性疾患です。
体内で花粉などのアレルゲンに曝露されると、IgE抗体が産生され、ヒスタミンなどの化学物質が放出されることで炎症が起こります。これが鼻水、くしゃみ、鼻づまり、目のかゆみといった症状につながります。
厚生労働省のe-ヘルスネットや日本アレルギー学会の情報によれば、花粉症は日本国内で非常に多くの人々に影響を及ぼし、特に春季(スギ、ヒノキなど)に症状が悪化することが確認されています。
定期的な症状のパターンや血液検査(IgE抗体検査)などで、花粉やその他のアレルゲンに対する過敏性が確認されることから、診断が確立されています。
以下の表は、花粉症・アレルギー性鼻炎の一般的な症状と影響を示しています。
症状 |
説明 |
具体例 |
鼻水・くしゃみ |
アレルゲンへの反応として、持続的な鼻水や連続くしゃみが発生 |
毎年春にスギ花粉が飛散する地域で頻繁に起こる |
鼻づまり |
炎症により鼻粘膜が腫れ、呼吸がしにくくなる |
夜間の睡眠時に呼吸がしづらく、睡眠の質が低下する |
目のかゆみ・充血 |
花粉が目に付着し、アレルギー反応で目がかゆくなり、充血する |
外出時にメガネやサングラスが必要になる場合もある |
たとえば、40代の男性が春先にスギ花粉の影響で、日中に何度もくしゃみを繰り返し、鼻づまりと目のかゆみで日常生活に支障をきたしている場合、花粉症・アレルギー性鼻炎と診断され、抗ヒスタミン薬や点鼻薬などの治療が行われることが一般的です。
花粉症・アレルギー性鼻炎の検査
花粉症・アレルギー性鼻炎の検査は、主に血液検査(特に特異的IgE抗体検査)を用いて、アレルゲンに対する感作状態を確認することで、正確な診断と治療方針の決定に役立ちます。
たとえば、30代の男性が春先に鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどの症状を訴えた場合、医師は血液検査を実施し、スギやヒノキに対する特異的IgE抗体が高値であることを確認して、花粉症・アレルギー性鼻炎と診断するケースが多く見られます。
花粉症・アレルギー性鼻炎の治療
花粉症・アレルギー性鼻炎の治療は、症状の軽減と生活の質(QOL)の向上を目的に、薬物療法、免疫療法、生活習慣の改善を組み合わせた包括的なアプローチが基本です。
以下の表は、花粉症治療の各アプローチとその効果を示したものです。
治療アプローチ |
主な治療内容 |
効果・目的 |
薬物療法 |
・抗ヒスタミン薬(内服、点鼻薬) |
即時の症状緩和、炎症の抑制 |
免疫療法 |
・舌下免疫療法(数ヶ月~1年以上継続) |
免疫系の過敏反応の改善、根本的な症状改善 |
生活習慣改善 |
・花粉情報を参考にした外出制限 |
アレルゲン曝露の最小化、症状の軽減、QOL向上 |
例えば、30代の重度花粉症患者が、従来の抗ヒスタミン薬だけでは十分な効果が得られず、舌下免疫療法を追加した治療プランを実施した結果、1年後には症状が大幅に軽減し、日常生活の質が向上したという報告があります。
舌下免疫療法
舌下免疫療法は、花粉症の原因であるアレルゲンに対する免疫系の過敏反応を根本から改善し、長期的な症状緩和と発作の再発防止を目指す効果的な治療法です。
舌下免疫療法は、微量のアレルゲンを舌下から継続的に投与することで、免疫系に「寛容(トレランス)」を形成させ、過剰なIgE抗体の産生を抑制します。
日本アレルギー学会や国立循環器病研究センターなどのデータにより、舌下免疫療法は中等症から重症の花粉症において、抗ヒスタミン薬などの従来療法と比べて長期的な症状改善効果が認められており、再発予防にも有効であると報告されています。
臨床試験では、舌下免疫療法に伴う副作用は比較的軽微であり、経口摂取型のため患者様のコンプライアンスも高いという点が評価されています。
以下の表は、舌下免疫療法の治療経過とその効果の一例を示しています。
治療期間 |
主な治療内容 |
期待される効果 |
初期(1~3ヶ月) |
毎日少量のアレルゲンを舌下投与 |
軽度の副作用(口内の刺激感など)を確認、免疫反応の初期変化の把握 |
中期(3~12ヶ月) |
用量調整を行いながら継続 |
症状の徐々の軽減、抗ヒスタミン薬の使用量削減 |
長期(1年以上) |
継続治療による免疫寛容の獲得 |
発作の再発防止、花粉シーズンにおける症状の大幅な軽減 |
例えば、40代の花粉症患者様が従来の抗アレルギー薬で十分な効果が得られなかったため、舌下免疫療法に切り替えた結果、1年後にはくしゃみや鼻水、目のかゆみが著しく軽減し、生活の質が大幅に向上したという事例が報告されています。
舌下免疫療法は、花粉症の根本治療を目指すアプローチとして、少量のアレルゲンを継続的に投与することで免疫寛容を誘導し、長期的な症状の軽減と再発防止に効果を発揮します。
科学的根拠と公的機関のデータに裏打ちされたこの治療法は、安全性も高く、従来療法に比べて生活の質の向上が期待できるため、症状が中等度以上の患者にとって有力な選択肢となります。
舌下免疫療法の治療の流れ
1アレルギーの確認
血液検査でスギアレルギー、ダニアレルギーの有無を確認します。
確認され、患者様ご本人が舌下免疫療法を希望される場合には、治療法・副作用のリスク等について詳細をご説明し、治療を開始します。
2アレルゲンエキス剤に対する反応確認
まず、アレルゲンエキス剤に対して過剰な反応がないことを確認します。
薬を舌下に1~2分間保持し、その後飲み込みます。
30分ほどクリニック内で過ごしていただき、アナフィラキシーの発現など問題なければそのままご帰宅していただきます。
3自宅で舌下
その後はご自宅で、毎日同じ時間に薬を舌下していただきます。
アレルギー症状が出る場合もありますのでできるだけ日中の内服をお勧めします。
治療開始から徐々に内服する薬の量を増やしていき、維持量に達したら一定量を舌下し続けます。
治療期間はおおむね3〜5年です。
舌下免疫療法の副作用について
舌下免疫療法は一般的に安全性が高い治療法ですが、副作用としては主に軽度な口内刺激、局所の腫れ、かゆみ、時には軽い全身反応が見られることがあります。
重篤な副作用は非常に稀です。
日本アレルギー学会や厚生労働省のe-ヘルスネットによると、舌下免疫療法は多数の臨床試験で評価され、その副作用は通常軽度で一過性であると報告されています。
国立循環器病研究センターのデータでも、舌下免疫療法中に報告される副作用は主に局所的な口内の不快感や軽度の腫れ、時折の頭痛や疲労感といった軽微なものに留まることが示されています。
初期導入期に低用量で開始し、体の反応を見ながら徐々に用量を調整するため、副作用のリスクを最小限に抑え、万が一副作用が発生しても迅速に対応できる体制が整えられています。
以下の表は、舌下免疫療法で一般的に報告される副作用の例とその特徴を示しています。
副作用の種類 |
具体的症状 |
発生頻度・特徴 |
局所刺激 |
舌内の軽いチクチク感、かゆみ、腫れ |
比較的よく見られるが、通常は数分~数時間で解消 |
口内不快感 |
軽度の口内違和感、口内炎のような症状 |
ごく一部の患者に見られ、治療中止に至るケースは稀 |
全身反応 |
頭痛、疲労感、軽い発熱 |
非常にまれで、一時的なものがほとんど、副作用として重大ではない |
例えば、40代の患者が舌下免疫療法を開始した際、初期に数分間の舌内かゆみと軽い腫れを経験しましたが、治療継続中は用量調整と共に症状が軽減し、治療全体において深刻な副作用は認められなかったという事例があります。
舌下免疫療法の治療開始時期
舌下免疫療法の治療開始時期は、花粉シーズンが始まる3~4か月前のオフシーズンに始めるのが理想的です。
これにより、治療効果が十分に発現し、シーズン中の症状軽減が期待できます。
日本アレルギー学会や各公的機関のガイドラインによれば、舌下免疫療法は免疫寛容を形成するのに一定期間が必要です。
花粉シーズン前に治療を開始することで、治療開始から数か月間で徐々に効果が現れ、花粉シーズン中には十分な効果を得られるとされています。
臨床試験や疫学的調査では、治療開始時期が早いほど、免疫寛容の獲得がスムーズに進み、シーズン中の症状の重症度が低減されるという結果が報告されています。
初期導入期で低用量から始め、徐々に用量を増加させることで、患者様ごとに安全かつ効果的な免疫応答が得られるため、治療開始時期はこの段階を十分に確保できる時期が望ましいです。
以下の表は、舌下免疫療法の治療開始時期とその流れの一例を示しています。
フェーズ |
期間(例) |
主な目的・効果 |
初期導入期 |
花粉シーズンの約4か月前(例:11月) |
ごく低用量のアレルゲン投与で安全性の確認、体の反応の把握 |
中期調整期 |
花粉シーズンの約3~1か月前(例:12月~2月) |
用量を徐々に増加させ、免疫寛容を促進 |
維持療法期 |
花粉シーズン中(例:3月~5月) |
既に獲得した免疫寛容を維持し、症状の発現を抑制 |
たとえば、春にスギ花粉が飛散する地域では、患者が前年の11月に舌下免疫療法を開始し、12月から2月にかけて用量を調整、3月以降の花粉シーズン中に治療効果を十分に発揮できるようになるという流れが報告されています。
舌下免疫療法の通院回数
舌下免疫療法では、初期導入期に週単位で頻繁な通院が必要ですが、その後は月1回程度のフォローアップで済むことが多く、治療開始から1年間でおおよそ10~15回程度の通院が目安となります。
舌下免疫療法は、まず低用量から始めて体の反応を確認しながら徐々に用量を増加させるプロセスです。
このため、治療開始直後は医師の管理下で頻繁な通院が必要となり、副作用や適正な用量調整を慎重に行うことが推奨されています。
初期期を経た後は、用量が安定して効果が認められる段階に入るため、定期検査や効果確認のためのフォローアップとして月1回程度の通院で十分とされ、治療の長期継続が容易になります。
複数の臨床試験や専門家のガイドラインによれば、舌下免疫療法の治療プロトコルは初期に集中した管理が効果を高め、維持期には月1回程度のフォローアップが患者様の安全と治療効果の持続に寄与することが確認されています。
以下の表は、舌下免疫療法の治療開始から維持療法に移行するまでの一般的な通院スケジュールの一例です。
治療フェーズ |
期間の目安 |
通院回数の目安 |
目的 |
初期導入期 |
治療開始〜1か月目 |
週1回程度 |
低用量のアレルゲン投与と体反応の確認、用量調整 |
中期調整期 |
2か月目〜6か月目 |
2~4週間に1回 |
用量増加と免疫寛容の獲得、症状改善の確認 |
維持療法期 |
7か月目以降〜1年目以降 |
月1回程度 |
長期的な免疫寛容の維持、定期フォローアップ |
たとえば、ある患者様は治療開始後の初月に週1回の通院で体の反応を確認し、2か月目からは2~3週間に1回のペースで用量を増加。1年目以降は、月1回の定期検診で症状の改善と安全性が確認されるというケースが報告されています。
舌下免疫療法の治療費用
|
1割負担 |
3割負担 |
|
スギに対する |
治療導入(14日分) |
約140円 |
約420円 |
---|---|---|---|
維持治療(28日分) |
約400円 |
約1,210円 |
|
ダニに対する |
治療導入(14日分) |
約180円 |
約530円 |
維持治療(28日分) |
約530円 |
約1,590円 |
※初診料・再診料や調剤料、指導料などは含まれません
舌下免疫療法の治療が
受けられない方
舌下免疫療法は効果的な治療法ですが、重篤な喘息や口腔内疾患、免疫抑制状態、極端な高齢者など特定のリスク要因を持つ方は安全性や効果の観点から受けられない場合があります。
以下の表は、舌下免疫療法が受けられない主な条件の一例を示しています。
対象条件 |
具体例 |
理由・リスク |
重篤な喘息 |
喘息が重症で頻繁な発作を繰り返し、コントロール不良 |
アナフィラキシーなど重篤な副作用リスクが高い |
口腔内疾患 |
口内炎や重度の口腔乾燥症 |
アレルゲンの舌下投与が困難で、治療効果が得られない |
免疫抑制状態 |
免疫抑制剤を使用中、または自己免疫疾患がある場合 |
免疫反応が低下し、十分な効果が得られない可能性がある |
極端な高齢者 |
非常に高齢で体力が著しく低下している患者 |
副作用リスクが高く、治療の安全性が保証されない可能性がある |
例えば、50代女性で重症の喘息があり、喘息の症状がコントロールされていない場合、医師は舌下免疫療法の実施をリスクが高いと判断し、他の治療法(抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイドなど)を優先するケースが見られます。
よくある質問
花粉症の予防策はどのようなものがありますか?
マスクやメガネの着用、外出時の花粉対策、室内の換気や空気清浄機の利用、そして定期的な洗濯で花粉を除去することが有効です。
舌下免疫療法はどのような効果が期待できますか?
長期的な治療により、アレルゲンに対する免疫寛容が獲得され、症状の軽減や再発防止が期待できますが、効果が現れるまでに数ヶ月の継続が必要です。
花粉症の重症度はどのように判断されますか?
症状の頻度や重症度、生活への影響、検査結果(特異的IgE抗体のレベルなど)を基に、医師が個別に評価します。
花粉症とアレルギー性鼻炎の違いは何ですか?
花粉症は主に花粉に対する免疫反応で季節性に現れますが、アレルギー性鼻炎は花粉以外のアレルゲン(ハウスダスト、ペットの毛など)にも反応することがあります。
免疫療法の効果が現れるまでの期間はどれくらいですか?
舌下免疫療法の場合、効果が実感できるまでに通常3〜6ヶ月の継続治療が必要です。
花粉症と喘息はどのように関連していますか?
花粉症患者様は喘息を併発しやすく、共通の免疫異常が背景にあるため、適切な治療で両方の症状改善が期待されます。
花粉症の症状が季節外れにも続くことはありますか?
一部の患者様では、花粉症に加えハウスダストなど他のアレルゲンが影響して、季節外れにも症状が継続する場合があります。
花粉症治療中に飲酒や喫煙はどのような影響がありますか?
飲酒や喫煙は免疫反応や炎症を悪化させる可能性があるため、治療効果を損なうリスクがあります。
市販薬と処方薬の違いは何ですか?
市販薬は軽度の症状向けで、医師の処方薬は重症例や長期管理に適した効果的な治療が期待されます。