膝痛とは

膝痛とは、膝関節およびその周囲の軟部組織(靭帯、軟骨、筋肉など)が何らかの原因で損傷または炎症を起こし、痛みや可動域制限、機能障害を引き起こす状態を指し、生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。
膝痛は、変形性膝関節症、靭帯損傷、半月板損傷、急性外傷、過使用による腱炎など、多岐にわたる原因によって発生します。
厚生労働省のe-ヘルスネットや日本整形外科学会のガイドラインによれば、膝痛は成人の約25〜30%に影響を及ぼしており、特に中高年で変形性膝関節症が頻発し、適切な治療がQOLの維持に重要であるとされています。
多数の臨床研究により、保存療法(薬物療法、理学療法、生活習慣の改善)と、重症例に対する手術療法(関節鏡下手術、人工膝関節置換術)が、痛みの緩和と機能回復に有効であることが示されています。
以下の表は、膝痛の代表的な原因とその治療アプローチの一例を示しています。
項目 |
具体例・説明 |
対応策・治療例 |
変形性膝関節症 |
中高年に多く、軟骨の摩耗、骨棘形成による膝の痛み、可動域制限 |
保存療法:NSAIDs、理学療法、体重管理、運動療法 |
半月板損傷 |
スポーツや急激な動作による半月板の損傷、膝のロックや引っかかり |
保存療法:リハビリ、理学療法 |
靭帯損傷・捻挫 |
急激な外力による靭帯の損傷、膝の不安定感、腫れ、痛み |
安静、固定、理学療法、場合により手術療法 |
過使用性腱炎 |
繰り返しの動作による膝周辺の腱の炎症、慢性的な痛み |
NSAIDs、アイシング、理学療法、休息 |
膝痛の原因となる病気
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨が摩耗・劣化し、骨棘形成や関節変形を引き起こす疾患で、痛み、こわばり、可動域の制限、歩行障害などが発生します。
早期の診断と適切な治療介入により、症状の緩和と機能回復が期待でき、患者様の生活の質(QOL)の向上につながります。
長期間の過度な負荷や加齢により、膝関節の軟骨が徐々にすり減り、骨と骨が直接接触することで骨棘が形成され、関節の炎症と変形が進行します。
厚生労働省のe-ヘルスネットや日本整形外科学会のガイドラインによれば、変形性膝関節症は中高年に多く、適切な保存療法および手術療法が推奨されています。
多数の臨床研究で、NSAIDsや抗炎症薬、理学療法、運動療法、体重管理などの保存療法が、痛みの軽減や可動域の改善に効果的であり、症状が進行した場合には人工膝関節置換術などの手術療法がQOL向上に寄与することが確認されています。
以下の表は、変形性膝関節症の症状と治療アプローチの一例を示しています。
項目 |
内容・具体例 |
対策・治療例 |
症状 |
・膝関節の鈍痛、特に歩行や階段昇降時に増悪 |
日常生活に支障をきたし、生活の質が低下 |
診断 |
・問診、身体検査 |
病変の進行度や重症度を正確に把握し、治療方針を決定 |
治療法(保存療法) |
・NSAIDs、抗炎症薬の内服 |
痛みの軽減、可動域の拡大、関節負荷の低減による症状進行の抑制 |
治療法(手術療法) |
・人工膝関節置換術、関節鏡下手術(重症例) |
痛みの根本的な解消と機能回復、QOLの向上を目指す |
例えば、65歳の女性が長年の肥満と不良姿勢により変形性膝関節症を発症し、膝の痛み、可動域の制限、歩行障害を訴えたケースでは、画像検査で軟骨摩耗と骨棘形成が確認されました。初期治療としてNSAIDsの内服、理学療法、運動療法、体重管理を中心とした保存療法が実施され、痛みが軽減し歩行能力が改善されたものの、症状が重度の場合は人工膝関節置換術が選択され、術後のリハビリテーションにより大幅な機能回復が達成された事例があります。
関節リウマチ
膝の関節リウマチは、自己免疫反応による慢性的な炎症が膝関節に及び、腫れ、痛み、こわばり、関節破壊を引き起こす疾患であり、早期診断と包括的な治療が関節の破壊進行を抑え、生活の質(QOL)の向上に不可欠です。
関節リウマチは自己免疫疾患であり、免疫系が膝の軟骨や骨に対して攻撃を行うことで、慢性的な炎症と関節破壊が進行します。
厚生労働省のe-ヘルスネットや日本リウマチ学会の資料では、関節リウマチは成人の約1%に影響を与え、特に女性に多く見られることが示され、早期治療が関節破壊の進行防止に効果的であるとされています。
血液検査(リウマトイド因子、抗CCP抗体、CRP、ESR)と画像診断を組み合わせることで、膝関節における炎症の進行度や破壊の程度を正確に評価し、個々の患者に合わせた治療方針が策定されます。
以下の表は、膝の関節リウマチの症状、診断、治療の一例を示しています。
項目 |
具体例・説明 |
対策・治療例 |
症状 |
・膝関節の腫れ、持続する痛み |
日常生活に支障が出るため、早期の介入が必要 |
診断 |
・問診と身体検査により症状評価 |
病態の正確な把握と重症度の評価により治療方針を決定 |
治療法 |
・薬物療法:DMARDs(メトトレキサートなど)や生物学的製剤 |
炎症の抑制、関節破壊進行の防止、機能回復、QOLの向上を目指す |
例として、55歳の女性が膝の痛み、腫れ、朝のこわばり、歩行困難を訴え、血液検査でリウマトイド因子と抗CCP抗体が陽性、さらに画像検査で膝関節に骨侵食が確認された結果、関節リウマチと診断されました。メトトレキサートと生物学的製剤を用いた薬物療法、併せて理学療法や生活習慣の改善プログラムを実施し、症状の緩和と歩行機能の改善、そして生活の質の向上が認められた事例があります。
半月板損傷
半月板損傷は、膝関節内の半月板における部分的または完全な断裂により、膝の痛み、腫れ、可動域の低下、そしてロック現象(関節が一時的に動かなくなる状態)を引き起こす疾患であり、早期の正確な診断と治療が重要です。
半月板は膝関節のクッションとして機能しており、損傷が生じると荷重分散が不十分となり、関節内の摩擦や炎症が増大します。
厚生労働省のe-ヘルスネットや日本整形外科学会のガイドラインによると、半月板損傷はスポーツや日常生活の反復動作で頻発し、早期治療がその後の関節変性を防ぐ上で重要とされています。
多くの臨床研究で、保存療法(理学療法、抗炎症薬)や必要に応じた関節鏡下手術が、半月板損傷の症状改善と機能回復に効果的であると報告されています。
以下の表は、半月板損傷の症状、診断、治療アプローチの一例です。
項目 |
具体例・説明 |
対応策・治療例 |
症状 |
・膝の痛み(特に回旋やねじり動作時に悪化) |
日常生活やスポーツ活動に支障をきたす |
診断 |
・問診と身体検査 |
正確な損傷の範囲と部位を把握し、治療方針を決定 |
治療(保存療法) |
・理学療法、抗炎症薬(NSAIDs)、休息 |
軽度から中等度の損傷の場合、自然治癒と機能回復を促進 |
治療(手術療法) |
・関節鏡下手術による半月板修復または部分切除(重症例) |
痛みの根本的な改善と関節内の安定性の回復を目指す |
例えば、30代のアスリートが急激な回旋動作中に半月板損傷を起こし、膝の痛みと一時的なロック現象を経験したケースでは、MRI検査で部分断裂が確認され、初期の保存療法(NSAIDs、理学療法、休息)を実施した結果、症状が改善されました。
症状が重度の場合は、関節鏡下手術による修復が行われ、スポーツへの早期復帰が可能となった事例があります。
オスグッド・シュラッター病
オスグッド・シュラッター病は、主に成長期の若年層に見られる膝前面の骨端部(脛骨結節)に対する過度な牽引負荷が原因で発生する炎症性疾患で、膝の痛みや腫れ、局所の圧痛を引き起こします。
早期の適切な治療と休息が、症状の改善と長期的な関節の健全性維持に重要です。
オスグッド・シュラッター病は、膝の伸展に関与する大腿四頭筋の反復的な牽引が、まだ成熟途中の脛骨結節に過度なストレスを与え、炎症を引き起こすことで発症します。
日本整形外科学会や厚生労働省のe-ヘルスネットによると、オスグッド・シュラッター病は特に運動を盛んに行う成長期の少年少女に多く見られ、適切な休息とリハビリテーションが推奨されています。
複数の臨床研究により、保存療法(休息、アイシング、NSAIDs、ストレッチ、理学療法)が有効であり、症状が重くない場合は自然治癒が期待できることが示されています。
以下の表は、オスグッド・シュラッター病の症状、診断、治療の一例を示しています。
項目 |
具体例・説明 |
対策・治療例 |
症状 |
・脛骨結節周辺の局所的な痛みと腫れ |
運動時や活動後に痛みが強く現れ、学業やスポーツ活動に支障をきたす |
診断 |
・問診、身体検査により痛みの部位と性質を評価 |
病態の重症度や成長過程の評価により、治療方針を決定 |
治療法 |
・保存療法:運動制限、安静、アイシング、NSAIDsの内服 |
痛みの緩和と炎症の抑制、関節への負荷軽減、長期的な自然治癒を促進 |
たとえば、14歳の運動部に所属する少年が、運動後に膝前面の激しい痛みと脛骨結節部の腫れを訴え、身体検査と画像検査でオスグッド・シュラッター病と診断されたケースでは、運動制限とNSAIDs、理学療法を実施した結果、数週間で症状が改善し、再発防止のための適切なストレッチと休息の指導が行われました。
膝痛は根治が難しい?
膝痛は、特に変形性膝関節症や慢性の炎症性疾患などの場合、根治が難しいとされていますが、適切な治療と生活習慣の改善により、症状の緩和と機能改善が可能です。
膝は体重支持の重要な関節であり、軟骨、靭帯、半月板など多くの組織が関与しています。
変形性膝関節症や慢性炎症性疾患は、進行性の軟骨摩耗や骨棘形成などが原因で、根本的な修復が難しいとされています。
厚生労働省のe-ヘルスネットおよび日本整形外科学会のガイドラインによれば、変形性膝関節症は中高年に非常に一般的であり、完全な治癒は難しいものの、保存療法や手術療法によって症状の管理が行われています。
多数の臨床研究で、保存療法(薬物療法、理学療法、運動療法、体重管理)が症状の改善に効果的である一方、進行した症例では人工膝関節置換術などの手術療法が必要となるため、完全な根治よりも症状管理が現実的な目標とされています。
以下の表は、膝痛に関する治療例とその効果の一例です。
症例 |
状況・症状 |
対策・治療例 |
結果 |
変形性膝関節症 |
中高年の患者が歩行時の膝の痛み、可動域制限、膝のこわばりを訴える |
保存療法:NSAIDs、理学療法、体重管理、運動療法 |
保存療法で症状が改善し生活の質が向上。進行例は手術により機能回復 |
炎症性膝関節疾患 |
関節リウマチなどの慢性炎症が膝に影響し、持続的な痛みと腫れがある |
DMARDsや生物学的製剤による薬物療法、リハビリテーション |
症状管理は可能だが、完全な根治は難しい |
例えば、65歳の女性が変形性膝関節症による膝痛で医療機関を受診し、保存療法(薬物療法、理学療法、体重管理)を中心に治療された結果、痛みが軽減し歩行能力が改善した一方で、関節自体の変形は残るため、完全な「治癒」とはいかないという現実があります。
膝痛、特に変形性膝関節症や慢性炎症性疾患に起因するものは、完全な根治が難しいとされています。
しかし、適切な治療介入(保存療法や必要に応じた手術療法)と生活習慣の改善により、症状の緩和、機能の改善、そして患者様の生活の質(QOL)の向上が期待されます。
したがって、膝に痛みや違和感を感じた場合は、早期に医療機関で評価を受け、個々の症状に応じた治療を受けることが重要です。
膝痛は膝だけが
悪いわけではありません
膝痛は、膝そのものの問題だけでなく、股関節、下肢、さらには腰椎や足のバイオメカニクスの異常など、全体の運動連鎖の乱れが原因である場合が多く、総合的な評価と治療が不可欠です。
膝は、歩行や立位において体重支持の中心的な役割を果たしており、股関節、足首、腰椎との連動が密接です。
例えば、股関節や足のバランスが悪いと、膝に不均一な負荷がかかり、痛みが発生する可能性が高まります。
厚生労働省のe-ヘルスネットや日本整形外科学会のガイドラインでは、膝痛の原因として、局所の関節障害だけでなく、下肢全体の機能不全や姿勢の問題が大きく影響していることが示されています。
多数の臨床研究で、膝痛の治療においては、膝単独の治療よりも、股関節、腰、足部の評価と治療を組み合わせることで、症状の改善や再発防止につながることが確認されています。
以下の表は、膝痛が膝だけでなく全体の運動連鎖の乱れに起因する例と、その対策を示しています。
状況・症例 |
具体例・説明 |
対策・治療例 |
股関節の異常 |
股関節の可動域制限や筋力低下が、膝に不均一な負荷をかけ、膝痛を引き起こす。 |
股関節のストレッチ、理学療法、筋力強化トレーニング |
腰椎や姿勢の問題 |
腰椎の変性や姿勢の悪さにより、歩行や立位時の負荷が膝に過度に集中する。 |
姿勢矯正、コアトレーニング、理学療法 |
足部のバイオメカニクスの乱れ |
足の扁平足や足関節の外反などが、歩行時の膝への衝撃を増加させ、膝痛を誘発する。 |
足底板の使用、足部のエクササイズ、整形外科的評価 |
例えば、40代のオフィスワーカーが、膝の痛みを訴えたが、詳細な評価の結果、股関節の柔軟性の低下と足の扁平足が原因で膝に過剰な負荷がかかっていたことが判明。股関節のストレッチ、足底板の使用、そして全体的な姿勢改善を行った結果、膝の痛みが大幅に改善され、日常生活の快適さが向上しました。
膝痛の診断・検査
膝痛の診断・検査は、問診や身体検査に加え、画像検査、そして必要に応じた血液検査や神経検査など多角的な手法を組み合わせることで、膝の痛みの原因を正確に特定し、最適な治療方針を決定するために不可欠です。
以下の表は、膝痛の診断・検査で使用される各検査方法とその役割、具体的な効果を示したものです。
検査方法 |
目的・評価内容 |
具体例/効果 |
問診・身体検査 |
痛みの発症時期、性質、外傷歴、生活習慣などを詳細に把握 |
症状パターンや日常動作への影響を確認 |
X線検査 |
骨の変形、骨棘形成、関節間隙の狭小化を評価 |
変形性膝関節症や骨折の有無を明確に診断 |
MRI/CT検査 |
軟部組織の状態、半月板や靭帯の損傷、炎症、骨の微細変化を詳細に評価 |
半月板損傷、靭帯損傷、初期の変形性膝関節症の評価に有用 |
超音波検査 |
腱や靭帯の炎症、液体貯留、微小な損傷をリアルタイムで評価 |
軟部組織の障害や炎症の状態を即座に把握 |
血液検査 |
CRP、ESRなどの炎症マーカー、自己免疫指標の測定 |
リウマトイド因子や抗CCP抗体の測定により炎症性疾患を鑑別 |
膝痛の治療法

膝痛の治療法は、痛みの原因や進行度に合わせた個別化されたアプローチが重要であり、初期は保存療法(薬物療法、理学療法、運動療法、体重管理など)を中心に、症状や重症度に応じて関節鏡下手術や人工膝関節置換術などの外科的介入が検討されます。
膝痛は、変形性膝関節症、半月板損傷、靭帯損傷、炎症性疾患など多岐にわたる原因で発生します。各疾患に対して異なる治療法が求められるため、正確な診断に基づいた個別治療が不可欠です。
厚生労働省のe-ヘルスネットや日本整形外科学会のガイドラインによると、膝痛の初期治療は、NSAIDsや抗炎症薬、理学療法、運動療法、体重管理を中心とした保存療法が効果的で、痛みの緩和や関節機能の改善が期待されます。
保存療法で効果が不十分な場合、関節鏡下手術や人工膝関節置換術など、手術療法が検討され、臨床研究ではこれらの手術により長期的なQOLの向上が示されています。
以下の表は、膝痛に対する治療法の一例を示しています。
治療法 |
主な内容 |
目的・効果 |
保存療法 |
・NSAIDsや抗炎症薬の内服 |
痛みの軽減、関節の可動域拡大、進行抑制、再発防止 |
外科的治療 |
・関節鏡下手術(半月板損傷、靭帯損傷の場合) |
痛みの根本的な解消、機能回復、歩行能力の改善、QOL向上 |