ぎっくり腰(急性腰痛症)とは

ぎっくり腰(急性腰痛症)とは、急激な負荷や不適切な動作により、腰部の筋肉や靭帯が急性に損傷し、激しい痛みと動作障害を引き起こす状態です。
通常、症状は突然発症し、数日~数週間で改善することが多いですが、早期の適切な治療と休息が重要です。
急な体のねじりや重い物の持ち上げなどによって、腰の筋肉や靭帯に過剰な負荷がかかり、微小な損傷が蓄積されることで激しい痛みが発生します。
厚生労働省のe-ヘルスネットによれば、ぎっくり腰は成人のごく一部が経験するものの、急性腰痛症の一形態として認識されており、適切な保存療法(安静、NSAIDs、温熱療法、理学療法など)が推奨されています。
多くの臨床研究で、急性腰痛症の治療においては、早期の休息と薬物療法、理学療法が症状の早期改善に寄与し、無理な運動を避けることで再発防止にもつながることが示されています。
ぎっくり腰の原因
ぎっくり腰の起きやすい状況
- 重いものを持ち上げたとき
- 急に立ち上がろうとしたとき
- ベッドから立ち上がろうとしたとき
- くしゃみをしたとき
- 洗顔のとき(前かがみの姿勢)
- 普段しない行動、動作をしたとき(引っ越しの荷下ろしなど)
- かがんだとき
- 急に姿勢を変えたとき
など
ぎっくり腰になりやすい仕事・生活習慣
- 座りっぱなしの仕事
- 重いものを持ち上げるような重労働の仕事
- 運動不足になりやすい方
- 体重が増加した方
- 身体が固い方
- 中腰の作業の多い仕事
- 姿勢がゆがんでいる方
など
ぎっくり腰の期間はどれくらい?
ぎっくり腰(急性腰痛症)の症状は、適切な保存療法を受けた場合、通常は数日から約2~4週間で大幅に改善することが多いですが、重症例や個人差により回復期間は異なることがあります。
多数の臨床研究で、早期の保存療法(安静、NSAIDs、温熱療法、理学療法)がぎっくり腰の回復期間を短縮し、再発リスクの低減に効果的であると示されています。
ぎっくり腰のときに
やってはならないこと
ぎっくり腰(急性腰痛症)の発症時には、痛みを悪化させたり、回復を遅らせたりする行動を避けることが極めて重要です。
特に、無理な動作や重い物の持ち上げ、過度な安静(長時間の寝たきり)などは、症状の悪化や筋肉の萎縮を招くため、やってはならない行動とされています。
避けるべき行動
- 無理な体の動かしすぎや急な動作
- 重い物を持ち上げるなどの過度な負荷
- 長期間の寝たきりによる過度な安静
推奨される行動
- 痛みの範囲内での適度な活動
- 早期の軽いストレッチや歩行
- 医師の指導に基づくNSAIDs、温熱療法、理学療法
ぎっくり腰の検査
ぎっくり腰(急性腰痛症)の検査は、主に問診や身体検査を中心に行われ、必要に応じて画像検査が実施されます。
これにより、重篤な外傷や他の疾患(骨折、椎間板ヘルニアなど)を除外し、急性腰痛症の診断を確定することができます。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、急性腰痛症は主に臨床症状に基づいて診断されることが推奨され、重症例や不明瞭な症状の場合にのみ、画像診断が追加されるとされています。
ぎっくり腰の治療

ぎっくり腰(急性腰痛症)の治療は、早期の保存療法を中心に行われ、適切な休息、薬物療法、冷却・温熱療法、そして段階的な理学療法や運動療法を組み合わせることで、症状の迅速な改善と再発防止が目指されます。
ぎっくり腰は、急激な体のねじりや重い物の持ち上げなどによって、腰の筋肉や靭帯に微小な損傷が発生し、炎症と痛みを引き起こします。初期の保存療法で炎症を鎮め、組織の回復を促すことが重要です。
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、冷却療法(アイシング)による急性期の痛みの緩和と、その後の温熱療法、理学療法、軽いストレッチや運動療法による再発防止と機能回復が、複数の臨床研究で効果的であることが示されています。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、急性腰痛症(ぎっくり腰)は適切な保存療法により、通常2~4週間で症状が改善するケースが多いと報告されています。
また、国立国際医療研究センターのエビデンスに基づく治療指針でも、過度な安静よりは痛みの範囲内での適度な活動が推奨されていることが確認されています。
以下の表は、ぎっくり腰の治療プロセスの一例を示しています。
項目 |
具体例・説明 |
対応策・治療例 |
初期対応 |
重い物を持ち上げた直後に腰に激しい痛みと突然の動作障害が発生。 |
即時の休息、アイシング、NSAIDsによる痛みと炎症の軽減 |
保存療法 |
痛みが落ち着いた後、徐々に腰の柔軟性と筋力を回復するために、理学療法や軽いストレッチを開始。 |
温熱療法、理学療法、ストレッチ、軽い運動の再開、体重管理 |
回復期 |
数週間で痛みが軽減し、日常生活への復帰が可能になる。 |
継続的な理学療法と運動療法、再発防止のための生活習慣の見直し |
例えば、40代の男性が、重い物を持ち上げた際にぎっくり腰を発症。救急受診後、X線検査で骨折等の重大な外傷は否定され、保存療法(休息、NSAIDs、アイシング、温熱療法、理学療法)を中心に治療が開始されました。約3週間後には痛みが大幅に軽減し、歩行機能も回復し、日常生活に復帰できた事例があります。
ぎっくり腰の予防
ぎっくり腰(急性腰痛症)の予防は、正しい姿勢の維持、適切な持ち上げ方法、定期的なストレッチ・筋力トレーニング、そして十分な休息と体重管理など、日常生活での基本的なケアが鍵となります。
これにより、腰部への過度な負荷を防ぎ、急激な腰痛の発症リスクを低減することが可能です。
以下の表は、ぎっくり腰の予防に関する具体的な対策とその効果の一例です。
対策・改善策 |
説明・具体例 |
期待される効果 |
正しい姿勢の維持 |
デスクワーク時に背筋を伸ばし、モニターの位置を適切に調整する |
腰部への不均一な負荷を軽減し、筋肉の疲労を防止 |
適切な持ち上げ方法 |
膝を曲げて持ち上げるなど、腰に過剰な負荷をかけない方法を実践する |
腰部の急性損傷や炎症のリスクを低減 |
定期的なストレッチ・運動 |
毎日1~2時間ごとに軽いストレッチやウォーキング、コアトレーニングを実施 |
血流促進、筋力強化、柔軟性の向上、再発防止につながる |
十分な休息と体重管理 |
睡眠時間を確保し、過度な体重増加を防ぐ |
腰部への負担を減らし、慢性的な痛みの予防に寄与 |
よくある質問
ぎっくり腰になりやすい人はどのような人ですか?
肥満、運動不足、腰の筋力が弱い人、過去に腰痛を経験した人、また、重労働や反復動作が多い職場に就いている人は、ぎっくり腰になりやすい傾向があります。不適切な姿勢や無理な動作もリスクを高めます。
ぎっくり腰発症時に早急に医療機関を受診すべきサインは何ですか?
激しい痛みで歩行が困難になったり、痛みが数日間改善せず、しびれや脚の弱さがある場合は、すぐに医療機関で診察を受けるべきです。また、痛みが急激に増した場合も注意が必要です。
ぎっくり腰の治療に伴う副作用やリスクはありますか?
NSAIDsなどの薬物療法は、消化器系への影響や腎機能への負担があるため、医師の指導のもとで適切に使用する必要があります。また、長期間の過度な安静は筋力低下を招く可能性があるため、適度な活動を取り入れることも重要です.
ぎっくり腰は再発しやすいですか?
一度ぎっくり腰を経験すると、腰部の筋肉や靭帯の弱体化が残るため、再発リスクが高まります。再発防止には、継続的な理学療法や正しい体の使い方、生活習慣の改善が重要です。
ぎっくり腰で手術療法が検討されるのはどのような場合ですか?
ぎっくり腰の大部分は保存療法で改善しますが、重度の神経障害や、骨折など重大な外傷が疑われる場合、または保存療法による改善が見られない場合には、手術療法が検討されることがあります。